MERCURY V8 / V10 AMS 電動ステアリング&ジョイスティックシステム 取扱説明書

MERCURY V8 / V10 AMS 電動ステアリング&ジョイスティックシステム 完全取扱説明書

🗂 目次

  • セクション 1 — 安全情報と保証
  • セクション 2 — システム概要
  • セクション 3 — 運転・操作手順
  • セクション 4 — デジタルスロットル&シフト(DTS)およびERC機能
  • セクション 5 — ヘルム・トランスファー(操舵席切り替え)
  • セクション 6 — アクティブ・トリム(Active Trim)
  • セクション 7 — ジョイスティック・パイロッティング(Joystick Piloting for Outboards)
  • セクション 8 — オートパイロットおよび高度機能(高度ジョイスティック機能)
  • セクション 9 — メンテナンス、トラブルシューティング、および緊急手順

■ セクション 1 — 安全情報と保証

1.1 推進システムに関する重要通知

本推進システム、電動ステアリングシステム、およびジョイスティック・パイロッティング・システムは、ボート全体の安全性と操縦性能に直接影響を与える重要な制御装置です。本マニュアルに記載されている指示、警告、注意、および手順に従わない場合、推進システムの制御喪失を引き起こし、結果としてボートの衝突、転覆、乗員の投げ出され、あるいは死亡や重傷に至る物理的な人身事故、ならびにボートやエンジンの重大な損傷を招く原因となります。運転を始める前に、必ず本マニュアルおよびすべての関連コンポーネントの取扱説明書を熟読し、内容を完全に理解してください。

1.2 船体固有設定(Vessel Personality)の変更に関する警告

本電動ステアリングシステムおよびジョイスティック・パイロッティング・システムには、ボートの製造元とMercury Marineが各船体モデルの特性に合わせて共同で開発・検証した推進プロファイルである「船体固有設定(Vessel Personality)」のデータが書き込まれています。この設定には、ステアリングの応答性、ジョイスティック操作時の各エンジンの推力配分、および自動制御時の補正アルゴリズムが含まれています。

⚠️ 警告
ボートの設計重量、重量分布(バラストタンクの増設や変更を含む)、プロペラのサイズやピッチ、またはエンジンの最大出力を、ボート製造元およびMercury Marineの明示的な許可なく変更しないでください。これらの変更は、書き込まれている船体固有設定(Vessel Personality)との不一致を生じさせ、ステアリングの過剰反応、応答遅れ、ジョイスティック操船時の予期せぬ船体の動き、最高速度の低下、あるいは操縦不能状態を引き起こす危険性があります。プロペラやボートの基本構成を変更する場合は、必ず事前に正規ディーラーまたはボート製造元にご相談ください。

1.3 安全警告シンボルと注意喚起語の定義

本マニュアルでは、回避しなければ人身事故や製品の破損につながる潜在的な危険を特定するために、以下の安全警告シンボルおよび注意喚起語を使用しています。それぞれの意味を厳密に理解し、記載されている指示に従ってください。

  • ⚠️ 危険 (DANGER): 回避しないと、死亡または重傷に至る差し迫った危険な状況を示します。
  • ⚠️ 警告 (WARNING): 回避しないと、死亡または重傷に至る可能性がある潜在的な危険な状況を示します。
  • ⚠️ 注意 (CAUTION): 回避しないと、軽傷または中程度の怪我に至る可能性がある潜在的な危険な状況を示します。
  • 通知 (NOTICE): 回避しないと、エンジン、ボート、コンポーネント、または関連機器の物理的損傷や性能低下に至る可能性がある、人身傷害を伴わない状況を示します。

■ セクション 2 — システム概要

2.1 完全電動ステアリングシステムの構成部品

本船に搭載されているMercury V10 Verado 400(およびV8/V10 AMS搭載船)のステアリングシステムは、従来の油圧シリンダーや油圧ヘルム、油圧ホース、パワーアシストポンプを一切使用しない、完全な「ステア・バイ・ワイヤ(Steer-by-wire)」電子制御システムです。システムは以下の主要部品で構成されています。

  1. 電動ステアリングヘルム(Helm): ステアリングホイールの回転角と回転速度をデジタル信号に変換するセンサーと、ホイールに適切な操舵抵抗(フィードバック)を与える電子モジュールを内蔵しています。
  2. 電子リモートコントロール(ERCレバー): シフトおよびスロットルの入力をデジタル信号としてCANバス(Controller Area Network)経由で送信します。
  3. ジョイスティック・パイロッティング・トラックパッド(Joystick Pad): 低速操船用のジョイスティックおよび高度な自動航行・定点保持機能の操作スイッチが統合されています。
  4. 電動ステアリングアクチュエータ(シリンダー): 各エンジンのアドバンスド・ミッドセクション(AMS)に直接取り付けられており、内蔵された高出力電動モーターとギヤ機構によって、油圧を一切介さずにエンジンを直接左右に転舵させます。
  5. 推進制御モジュール(PCM)およびステアリング制御モジュール(SCM): システム全体の通信を監視し、センサーからの信号に基づいて最適な転舵角、シフト位置、エンジン回転数をリアルタイムで計算・実行します。

2.2 ステアリング・バイ・ワイヤの基本動作

ドライバーがステアリングホイールを操作すると、ヘルム内のセンサーがその動きを検知し、デジタル信号がステアリング制御モジュール(SCM)に送信されます。SCMは各エンジンに取り付けられた電動ステアリングアクチュエータにコマンドを送り、モーターを駆動させてエンジンを動かします。

本システムでは、複数基のエンジンが機械的にタイバー(連絡棒)で連結されていません。各エンジンは個別の電動アクチュエータによって完全に独立して動くことができます。これにより、通常の航行時はすべてのエンジンが平行に動きますが、ジョイスティック操船時や自動制御時には、個々のエンジンが異なる角度に個別に転舵することが可能となっています。

2.3 オーディオアラーム(警告音)のパターンと故障分類

システムは、センサー、通信ライン、モジュール、または電圧に異常を検知した場合、ヘルムディスプレイ(VesselView等)に fault(故障)コードを表示すると同時に、オーディオアラーム(警告音)を発してオペレーターに危険を知らせます。警告音には以下の2つの主要なパターンがあり、それぞれ重要度が異なります。

1. クリティカル fault(重大な故障)

  • 警告音のパターン: 連続した単一の警告音(ピーーーという途切れない音)。
  • システムの状況: ステアリングの制御喪失、エンジン制御の致命的なエラー、またはシステムの完全な機能停止に直結する異常が発生しています。
  • 必要な措置: 障害物との衝突を回避するための緊急時を除き、直ちにボートの安全を確保した上でエンジンを停止(OFF)してください。故障の原因が特定され、完全に修理されるまで、絶対に運転を再開しないでください。重大な故障を無視して走行を続けると、突然ステアリングがロックするか、予期せぬ方向へ急旋回するなど、重大な人身事故や死亡事故につながる恐れがあります。

2. ノン・クリティカル fault(軽度・中等度の故障)

  • 警告音のパターン: 断続的な警告音(ピッ、ピッ、ピッ、またはピピピという途切れる音)。
  • システムの状況: システムの一部の機能(例:一部のオートパイロットモード、アクティブ・トリム、またはジョイスティックの一部機能)が制限されているか、電圧が低下しているなど、直ちに制御不能にはならないものの、注意が必要な状態です。
  • 必要な措置: 速度を落として慎重に操船し、ヘルムディスプレイに表示されているメッセージを確認してください。最寄りの安全な港に入港し、Mercury正規ディーラーによる診断を受けてください。

■ セクション 3 — 運転・操作手順

3.1 出航前点検手順(日常点検)

安全な航行を確保するため、毎回の出航前に必ず以下の点検手順を順番通りに実施してください。

  1. ステアリングロック(輸送用固定具)の確認: ボートを陸上輸送(トレーラリング)する際、エンジンおよび電動ステアリングアクチュエータを保護するために装着していたステアリングロック(固定用プラスチックブロックやノブ)が、すべて取り外されていることを目視で確認してください。
  2. 周囲の安全確認: エンジンの周囲、特にカウリング(エンジンカバー)同士の間、および船尾のトランサムやプロペラ付近に、人、ロープ、障害物、またはメンテナンス用工具などが一切存在しないことを確認してください。
  3. バッテリー電圧の確認: イグニッションキーを「ON」または「RUN」位置にし、エンジンを始動する前に、ディスプレイ上で各エンジン・システムのバッテリー電圧を確認してください。電圧が規定値以下に低下している場合は、充電するかバッテリーを交換するまで出航しないでください。
  4. ステアリングホイールの動作確認(始動前テスト): エンジンをかける前に、キーがONの位置にある状態でステアリングホイールを左右の限界までゆっくりと回し、引っかかりや異音、または警告音が鳴らないかを確認してください。
  5. リモコンレバー(ERC)のニュートラル確認: すべてのリモコンレバーがカチッと中央の「ニュートラル(中立)」位置に収まっていることを確認してください。

3.2 イグニッションON時のシステム挙動

イグニッションキーを「OFF」から「RUN」位置に回すと、システムが起動し、自動セルフチェック(自己診断)が開始されます。起動時、システムチェックが正常に完了すると、ヘルムから短い電子音が鳴ります。この時点で、電動ステアリングアクチュエータに通電され、ステアリングシステムが有効化されます。後述するステアリングロックが装着されたままこの操作を行うと、システムが無理に動かそうとして重大な破損を招くため、必ず事前に取り外しておく必要があります。

3.3 ステアリング可動域(ロック・トゥ・ロック)の自動校正と仕様

本電動ステアリングシステムは、機械的なストッパーに依存せず、電子的に左右の舵角限界(エンドストップ)を設定・制御しています。そのため、以下のような固有の動作特性を持っています。

  • 始動時の位置認識: エンジンを始動した際、ステアリングの物理的な位置が中央(直進方向)から1回転以上ずれていた場合、システムは始動後の最初の操作において、そのずれた位置を一時的な基準として認識することがあります。
  • オートパイロット終了時の挙動: オートパイロット(自動航行、オートヘディングなど)を解除して手動操船に戻した直後、ステアリングホイールの位置が本来のセンターから少し傾いている場合があります。これはシステムの仕様であり、故障ではありません。
  • 自動センター復帰(マイグレーション機能): 手動操作に戻った後、ボートを直進させて走行していくにつれて、システムは内部のセンサーデータ(GPSおよび舵角センサー)を基に、ステアリングホイールの中央位置とエンジンの直進方向を徐々に、かつ自然に一致させるように自動補正(マイグレーション)を行います。オペレーターが手動で位置を直す必要はありません。
  • ロック・トゥ・ロックの確認: 点検の際、ステアリングホイールを右いっぱいに回し、そこから左いっぱいに回して、何回転(回転数およびエンドストップの位置)するかを確認してください。左右均等にスムーズに回り、限界位置で電子的な抵抗(これ以上回らない感覚)が発生することを確認してください。

3.4 低速時のステアリング特性と高速走行時のアシスト変化

本システムは、船舶の速度およびエンジン回転数(RPM)に応じて、ステアリングの軽さ(アシスト量)とロック・トゥ・ロックの回転数を自動的に変化させる可変ステアリング機能を備えています。

  • 低速・離着岸時: 狭い港内での操船を容易にするため、ステアリングホイールの回転は非常に軽くなり、少ない回転数でエンジンが最大角まで大きく転舵するように設定されています。
  • 高速走行時: 高速走行中の過度なステアリング操作によるボートの急旋回や転覆を防ぐため、ステアリングホイールの操作感は適度に重くなり、最大舵角までの必要回転数が増加します。これにより、高速域での安全で精密なハンドリングが可能となります。

■ セクション 4 — デジタルスロットル&シフト(DTS)およびERC機能

4.1 電子リモートコントロール(ERCレバー)の各部名称と操作

電子リモートコントロール(ERC)は、従来のワイヤーケーブルに代わり、電子信号でエンジンのシフト(前進・ニュートラル・後進)およびスロットル(回転数)を制御します。ERCのトラックパッド(土台部分のボタン群)には、安全かつ効率的な操船を行うための各機能ボタンが配置されています。レバーの動きはスムーズであり、ニュートラル位置、前進ディテント、後進ディテントが明確に手に伝わる設計になっています。

4.2 1 LEVER(シングルレバーモード)の作動条件と仕様

2基以上のマルチエンジンを搭載している船において、複数のリモコンレバーを個別に操作する煩わしさを解消するモードです。

  • 作動手順:
    1. すべてのERCレバーを「ニュートラル」位置にします。
    2. トラックパッド上の「1 LEVER」ボタンを押します。インジケーターLEDが点灯し、モードが有効になります。
  • 動作仕様: 有効化されると、ポート(左舷)側のリモコンレバー1本だけで、搭載されているすべてのエンジン(2基、3基、または4基すべて)のシフト操作とスロットル加減速を同時に、完全に同期させてコントロールできます。スターボード(右舷)側のレバーは無効化され、動かしてもエンジンは反応しません。
  • 解除手順: 再度「1 LEVER」ボタンを押すか、レバーをニュートラルに戻すことで解除され、通常の個別レバー制御に戻ります。

4.3 SYNC(エンジン同期モード)の作動条件と例外制限

マルチエンジン船において、左右のエンジンの回転数を自動的に一致させ、船体の振動を抑えて直進性を高める機能です。

  • 作動条件: 本システムでは、イグニッションキーをONにした時点で、SYNCモードは常に自動的に有効(デフォルト作動)になります。
  • 動作仕様: オペレーターが左右のERCレバーを操作する際、レバー同士の位置の差が10%以内の範囲にあれば、システムはすべてのエンジンの回転数(RPM)を、スターボード(右舷)側の外側エンジン(マスターエンジン)の回転数に自動的に完全に同期させます。
  • 例外制限(同期の自動解除): レバーの可動域の最後の10%(最大スロットル付近)、またはレバー同士の位置が10%以上離れた場合、システムは個々のエンジンがそれぞれの最大出力を発揮できるように、自動的にSYNC(同期)を解除します。レバーを再び近づすれば自動的に再同期します。

4.4 THROTTLE ONLY(スロットルオンリーモード)の挙動と警告

ボートを係留したままエンジンの暖機運転を行う場合や、バッテリー充電のためにエンジン回転数だけを上げたい場合に使用するモードです。

  • 作動手順:
    1. ERCレバーを「ニュートラル」位置にします。
    2. 「THROTTLE ONLY」ボタンを押します。LEDインジケーターが点灯します。
  • 動作仕様: このモードが有効な間は、ERCレバーを前進または後進方向に動かしても、ギヤ(クラッチ)はニュートラルのまま噛み合わず、エンジンの回転数(スロットル)だけが上昇します。
⚠️ 注意と警告(動作の例外)
スロットルオンリーモード中であっても、ステアリングホイールを回したり、ジョイスティックを動かしたりすると、エンジン(アクチュエータ)は左右に転舵(ノズルの向きが変更)します。ギヤが入っていないため船体は動きませんが、エンジンが予期せず動いて周囲の物や人と接触しないよう十分注意してください。また、ギヤが入らない状態でレバーを動かした際、ボタンの押し方が不十分であったりモードが解除されていたりすると、ボートが突然急発進して死亡や重傷を伴う衝突事故の原因となります。レバーを動かす前に、必ずディスプレイおよびLEDでモードが確実に有効になっていることを確認してください。

4.5 START/STOP ALL ENGINES(全エンジン一斉始動/停止ボタン)のシーケンス順序

マルチエンジン搭載船において、1つのボタンで全エンジンを効率的かつ安全に始動・停止するための機能です。

  • 一斉始動(START)シーケンス: すべてのレバーがニュートラルにあり、キーがONの位置にある状態で「START/STOP ALL」ボタンを押すと、システムはスターター電流の過負荷を防ぎ、通信を安定させるために、以下の厳密な順序(シーケンス)でエンジンを1基ずつ自動的に始動します。
    1. スターボード・アウトサイド(右舷最外側)エンジン
    2. ポート・アウトサイド(左舷最外側)エンジン
    3. スターボード・インサイド(右舷内側)エンジン(※3基または4基掛けの場合)
    4. ポート・インサイド(左舷内側)エンジン(※4基掛けの場合)
  • 一斉停止(STOP)シーケンス: いずれか、またはすべてのエンジンが運転中に「START/STOP ALL」ボタンを押すと、システムは即座に作動中のすべてのエンジンを同時に停止させます。

■ セクション 5 — ヘルム・トランスファー(操舵席切り替え)

5.1 複数操舵席システムにおけるトランスファーの手順

フライブリッジやアフターヘルムなど、1隻のボートに複数の操舵場所が設置されているシステムにおいて、制御権を別の操舵席へ安全に移譲(トランスファー)するための厳密な手順です。

  1. 人員の配置: 操船の未制御状態を防ぐため、切り替え元の操舵席と、新しく制御を握る切り替え先の操舵席の両方に、必ず適切なオペレーターが配置されていることを確認してください。一人で移動しながら切り替え操作を行うことは絶対に避けてください。
  2. レバーの中立化: すべての操舵席において、すべての電子リモコンレバー(ERC)が完全に「ニュートラル(中立)」位置にあることを確認してください。レバーが少しでも前後進に入っていると、安全装置が働きトランスファーは実行されません。
  3. イグニッションの確認: 制御を移す対象のすべてのエンジンのイグニッションキーが「ON」または「RUN」の位置にあることを確認します。
  4. トランスファーの要求(1回目): 新しくアクティブにしたい操舵席のトラックパッドにある「TRANSFER」ボタンを1回押します。この時、ボタンのLEDインジケーターが点滅を開始し、ヘルムから「ピッ」と単発のビープ音が1回鳴ります。
  5. トランスファーの確定(2回目): 最初のボタン押下から10秒以内に、同じ操舵席の「TRANSFER」ボタンをもう一度(2回目)押します。切り替えが正常に完了すると、LEDインジケーターが点滅から「点灯」に変わり、完了を知らせる確認のビープ音が鳴ります。

5.2 トランスファー実行時の安全上の制限事項と自動解除機能

ヘルム・トランスファーは、ボートの挙動に急激な変化を与えないよう、多くの安全制限が設けされています。

  • 10秒タイムアウト: 最初の「TRANSFER」ボタン押下から2回目の押下までに10秒以上が経過した場合、要求は安全のために自動的にキャンセル(タイムアウト)されます。LEDは消灯し、制御権は元の操舵席に残ります。最初から手順をやり直してください。
  • 高度機能の自動解除: トランスファーを実行した瞬間、それまで作動していたスカイフック(定点保持)、オートヘディング(自動保針)、およびルート追従モード(ナビゲーション連動)などの高度な自動パイロット機能は、すべて自動的に強制解除、またはスタンバイモードに移行します。切り替え先の操舵席で手動操船を行うか、必要に応じて高度機能を再起動してください。これを忘れると、切り替え直後にボートが意図しない動きをしたり、風や潮に流されたりして衝突する原因となります。

■ セクション 6 — アクティブ・トリム(Active Trim)

6.1 アクティブ・トリムの概要と制御アルゴリズム

アクティブ・トリム(Active Trim)は、内蔵されたGPSからの船舶速度データおよびエンジン回転数データをリアルタイムで解析し、走行中のボートのトリム角度(エンジンの傾き角度)を自動的に最適化するMercury Marine独自の特許電子制御システムです。手動での頻繁なトリム調整を不要にし、常に最高の燃料効率、最適な乗り心地、およびボートの操縦安定性を自動で維持します。

6.2 4つの動作モードの詳細

アクティブ・トリムが作動している間、システムは船速に応じて以下の4つのモードを自動的に切り替えます。

  1. アイドルスピードモード(低速維持): ボートが港内などをデッドスロー(低速)で航行している間、システムはトリムを変更せず、現在の設定位置、またはあらかじめ設定された基本トリム位置をそのまま維持します。
  2. 加速モード(ホールショット): オペレーターがレバーを倒して加速を開始すると、システムはボートの船首が極端に持ち上がる現象(バウライズ)を最小限に抑え、船体を素早く効率的にプレーニング(滑走状態)に移行させるため、エンジンを自動的に最大位置までタックイン(最も下方向へトリムダウン)させます。
  3. プレーニングスピードモード(滑走航行): ボートが滑走状態(プレーニング)に達すると、システムはGPSから得られる船速の上昇に合わせて、エンジンのトリムを徐々にトリムアウト(上方向へ上げる)していきます。
  4. 手動優先モード(オーバーライド): アクティブ・トリムが自動制御を行っている最中であっても、オペレーターがERCレバーのグリップにある手動トリムスイッチ, またはダッシュボードの手動トリムボタンをわずかでも操作した瞬間、自動制御は即座に一時解除(オーバーライド)され、手動でのトリム操作が100%優先されます。

6.3 動作制限事項、最高速度制限、および水深検知に関する重要警告

アクティブ・トリムを安全に使用するためには、以下の物理的な制限とシステムの限界を完全に把握しておく必要があります。

  • 最高速度制限: ボートの速度が80 km/h(50 mph)を超えるか、またはエンジンの最大定格回転数の80%を超えた場合、高速走行時における予期せぬトリム変化による船体の挙動不安定化を防ぐため、アクティブ・トリムの自動制御は安全装置として自動的に停止(ホールド)されます。速度がこの制限値以下に減速すると、自動制御は自動的に再開されます。
  • チルトレンジでの不作動: エンジンがトレーラー輸送位置や浅瀬航行用位置など、通常のトリムレンジ(可動域の下半分)を超えてチルトアップ(上部50%以上の領域)されている場合、アクティブ・トリムは作動しません。
⚠️ 浅瀬および障害物に関する致命的な警告
アクティブ・トリムシステムには、前方や下方の水深を測定するセンサー、および水中の障害物(岩、砂地、流木など)を検知する機能は一切備わっていません。したがって、ボートが浅瀬や底の浅いエリアに進入した場合であっても、システムが自動でエンジンをチルトアップしてプロペラやロアケースを保護することは絶対にありません。浅瀬、サンゴ礁、または障害物が多い海域を航行する際は、アクティブ・トリムに依存せず、必ずシステムをオフにするか手動トリムスイッチでオーバーライドし、目視で水深を確認しながら慎重にチルト角度を調整してください。この警告を無視すると、ロアケースの損壊、ステアリングアクチュエータの破損、および座礁に伴う急停止による乗員の投げ出されなど、重大な人身事故につながります。

■ セクション 7 — ジョイスティック・パイロッティング(Joystick Piloting for Outboards)

7.1 ジョイスティック操船の基本原理と複数基エンジンの独立転舵(Splay)

ジョイスティック・パイロッティング(JPO)は、2基以上のマルチエンジンを搭載した船舶において、低速での離着岸、狭い水路での操船、および係留を容易にするための高度な電子制御システムです。

  • 動作の原理: 従来のステアリングホイールとリモコンレバーによる操作とは異なり、ジョイスティックを傾けた方向(前後・左右・斜め)およびひねった方向(旋回)に合わせて、システムが複数のエンジンのシフト(前進・後進)、スロットル(推力)、およびステアリング角度を各基ごとに完全に独立して自動制御します。
  • エンジンのハの字開閉(Splay): ボートを真横に移動させたり、その場で旋回(360度ピボット旋回)させたりするために、システムは一方のエンジンを前進、もう一方を後進に入れ、かつそれぞれのエンジンの向きを大きく外側や内側に開かせる「ハの字(または逆ハの字)」の状態(Splay)に自動的に転舵させます。

7.2 ジョイスティックの作動条件

ジョイスティックによる操船を有効にするには、システムが安全と判断できるよう、以下の条件がすべて完全に満たされている必要があります。

  1. すべてのエンジンのイグニッションキーが「ON」であり、エンジンが始動していること。
  2. 電子リモコンコントロール(ERC)のすべてのレバーが、完全に「ニュートラル(中立)」位置にあること。レバーが1本でもギアに入っている場合、ジョイスティックに触れてもシステムは一切起動しません。
  3. オートパイロットやスカイフックなどの他の自動モードが作動していないこと。

7.3 風、海流、船体荷重点(バラスト等)が及ぼす影響と手動補正

ジョイスティック・パイロッティングは非常に強力なアシスト機能ですが、物理的な外力や船体の状態をすべて自動で完全に相殺することはできません。

  • 外力の影響: 強風、強い潮流、波浪は、ボートの船首や船尾を押し流します。特にキャビンが大きいボートは風に流されやすく、船尾側に強い潮流を受けると横移動が著しく阻害されます。
  • 船体荷重点(重量分布)の影響: ボート内の乗員の配置、燃料や清水タンクの残量、バラストタンクの水の量などによって船体のピボットポイント(回転の中心軸)は常に変化します。
  • オペレーターによる手動補正: システムはこれらを完全に予測することはできないため、オペレーター自身が状況を目視で判断し、手動でジョイスティックの操作量を補正する必要があります。

7.4 ADJUST(微調整)ボタンによる減速モードとバウスラスター統合機能の制限

ジョイスティックのトラックパッドにある「ADJUST」ボタンは、状況に応じてシステムの推力出力を変更するための機能です。

  • 減速モード(Reduced Demand): ADJUSTボタンを押して、LEDインジケーターのセグメント表示を2セグメント(通常モード)から1セグメント(減速モード)に減少させると、ジョイスティックを最大まで傾けたときのエンジン最大推力および応答速度が強制的に抑制されます。
  • バウスラスター統合キット装備船における制限事項: ボートにMercury純正のバウスラスター統合システムが装備されている場合、ADJUSTボタンを操作して1セグメント(減速モード)に切り替えると、安全および電力保護の仕様上、バウスラスターの自動統合機能が一時的に強制無効化(OFF)されます。スラスターを再度連動させるには、ADJUSTボタンを押して通常モード(2セグメント)に戻す必要があります。

7.5 エンジンON/OFF時およびチルト操作時におけるカウリング(エンジンカバー)の衝突防止手順

独立して動く電動ステアリングアクチュエータの特性上、カウリング(エンジンカバー)同士の物理的な衝突を避けるための極めて重要な手順です。

  • 物理的な危険性の理由: ジョイスティック操船を行った直後、各エンジンは左右に大きく開いた「ハの字(Splayed)」の状態のまま止まっていることがよくあります。このエンジンが開いた状態のまま、イグニッションキーを「OFF」の位置に回してしまうと、ステアリングアクチュエータへの通電が遮断され、エンジンは開いた角度のままその場で完全にロックされてしまいます。
  • チルトアップ時の大破損リスク: エンジンが開いたまま固定された状態で、ボートの上架や輸送のために各エンジンのトリム/チルトスイッチを操作してチルトアップを行うと、トランサムの形状やブラケットの角度により、隣り合うエンジンのカウリング同士が非常に強い力で激しく衝突し、カウリングが割れる、あるいは押し潰されるといった大破損が発生します。
  • 重要:自動センター復帰手順(キーOFF前のルーティン): ジョイスティック操船を終了し、エンジンを停止する前に、必ず以下の手順を実行して、すべてのエンジンを完全に中央(直進位置)に復帰させてください。
    1. エンジンを始動したまま、またはイグニッションキーが「RUN」位置にある状態で、手動のステアリングホイールをどちらかの方向へわずかに回します。
    2. あるいは、ジョイスティックレバーをいずれかの方向へ軽く一瞬だけひねるか傾けます。
    3. システムは手動操作または入力を検知したことでジョイスティックモードから通常モードへ移行し、すべてのエンジンを自動的に整列させ、完全なセンター(中央直進位置)へと戻します。
    4. ディスプレイのドライブポジションインジケーター、または目視によって、すべてのエンジンが完全に平行かつ真っ直ぐ前を向いていることを確認してください。
    5. 確認が取れたら、イグニッションキーを「OFF」にします。
  • キーOFF後のチルト操作に関する注記: イグニッションキーを「OFF」の位置にした後であっても、電源管理モジュールのリレー制御により、最大15分間はトリムおよびチルトスイッチへの通電が維持されるため、エンジンのチルトアップ操作自体は可能です。しかし、上記のセンター復帰を行わずにチルトアップすると前述の衝突破損が起きるため、必ず「キーOFFの前にセンターに戻す」ことを徹底してください。

■ セクション 8 — オートパイロットおよび高度機能(高度ジョイスティック機能)

8.1 スカイフック(Skyhook / 定点保持機能)の動作原理

スカイフック(Skyhook)は、高精度GPSアンテナおよびデジタル電子コンパスからのデータを元に、船舶の現在位置(経度・緯度)とコンパス方位(船首の向き)をシステムが常に監視し、風や潮流に抗してボートをその場に完全に固定・維持する自動定点保持機能です。

8.2 スカイフック作動時における生命に関わる重大な警告と人身事故防止措置

⚠️ 危険 (DANGER) — 致命的な人身事故に関する警告
スカイフック機能が作動している間、ボートが静止しているように見えても、システムは位置を維持するために個々のエンジンのプロペラを自動的、かつ完全に予期せぬタイミングで突然回転させます。また、風や潮の変化に応じて、エンジンが突然左右に大きく転舵し、船体が急激に前後左右へ動くことがあります。プロペラの回転による巻き込み、およびアクチュエータの急作動は、人間の生命に関わる致命的な切創、切断、または溺死事故に直結します。以下の規則を厳格に遵守してください。
  1. 水中に人がいる場合の完全禁止: ボートの周囲、または水中に人が一人でもいる場合は、絶対にスカイフックを作動させないでください。シュノーケリング、スキューバダイビング、海水浴、ウェイクボードなどのエントリーやエキジット時、あるいは落水者の救助時には、スカイフックの使用は完全に禁止です。
  2. 作動中の入水に対する緊急措置: スカイフックが作動している最中に、乗員が予期せず水に入った場合は、オペレーターは躊躇することなく、直ちにすべてのエンジンを「OFF」にするか、手動リモコンレバーを動かしてスカイフックを強制解除してください。
  3. 船尾エリアへの立ち入り禁止: スカイフック作動中は、船尾のトランサム、スイムプラットフォーム、搭乗用ラダー(ハシゴ)、および船外機本体のすぐ近くのエリアに、乗員を絶対に立ち入らせないでください。船体の突然の揺れでバランスを崩して落水し、回転しているプロペラに巻き込まれる危険性が極めて高くなります。
  4. オペレーターの着座義務: スカイフック作動中であっても、メインの操舵席には必ず適切なライセンスを持ったオペレーターが着座し、常に周囲の安全、周囲の船舶との距離、および水面の状況を監視し続けなければなりません。

8.3 安全警告ラベルの維持管理

ボートの船尾付近、特にスイムプラットフォームや搭乗ラダーから明確に目視できる位置に、Mercury Marineが指定する「スカイフック作動時のプロペラ警告ラベル」が確実に貼付されていることを確認してください。経年劣化、海水による剥がれ、または高圧洗浄などによってラベルが紛失している、あるいは文字が読み取れなくなっている場合は、直ちにMercury正規ディーラーから純正の交換用安全ラベルを入手し、元の位置に貼り直してください。ラベルが貼付されていない状態でのスカイフックの使用は認められません。

8.4 ボウフック(Bowhook / 位置保持・方位自由モード)の詳細

ボウフック(Bowhook)は、スカイフックの派生機能であり、ボートの位置(GPS座標)のみを自動的に維持し、コンパス方位(船首の向き)のロックを解除するモードです。このモードでは、船首の向きは固定されません。風や潮流の受ける力に応じて、ボートは最も抵抗が少ない向きへと自然に回転します。

8.5 ドリフトフック(Drifthook / 方位保持・位置自由モード)の詳細

ドリフトフック(Drifthook)は、位置のロックを解除し、ボートのコンパス方位(船首の向き)のみを自動的に維持するモードです。ボートは風や潮流に乗って水面を自然に流されていきますが、船首が指しているコンパスの角度だけは、システムがステアリングと微弱な推力を使って常に一定に保ちます。

8.6 オートヘディング(Auto Heading / 自動保針)の作動条件、操作方法、および10度ずつの微調整手順

オートヘディングは、設定したコンパス方位に向かってボートを自動的に直進させる簡易パイロット機能です。

  • 厳密な作動条件: オートヘディングを有効にするするには、すべてのエンジンが前進ギアに入っており、ボートが前進して走行している状態でなければなりません。ギヤがニュートラルにある場合、または後進に入っている状態では、ボタンを押しても機能は有効になりません。
  • 操作方法: 希望する針路にボートを向け、前進走行中にジョイスティックトラックパッド上の「AUTO HEADING」ボタンを押します。システムから確認音が鳴り、現在のコンパス方位がロックされ、自動保針が開始されます。
  • ジョイスティックによる針路の微調整(1度 / 10度ステップ): オートヘディング作動中に、手動でハンドルを回さずに針路を細かく変更したい場合は、ジョイスティックレバーを使用します。
    • 1度ずつの調整: ジョイスティックを左右のいずれかに「1回カチッと軽く傾ける(タップする)」と、傾けた方向に針路が1修正されます。
    • 10度ずつの調整: ジョイスティックを左右のいずれかに「1回カチッとひねる(ツイストする)」と、ひねった方向に針路が10一気に修正されます。

■ セクション 9 — メンテナンス、トラブルシューティング、および緊急手順

9.1 定期メンテナンススケジュール

電動ステアリングアクチュエータおよび関連システムを安全に維持するため、以下のMercury Marine指定のメンテナンス間隔を遵守してください。

  • 毎回の使用後(日常): エンジンをチルトアップした状態で、電動ステアリングアクチュエータのシャフト、電気配線コネクタ、およびAMS周囲を、きれいな真水で十分に洗浄し、塩分や付着したゴミ、海草などを完全に除去してください。
  • 定期点検(100時間または1年ごとのいずれか早い方): すべてのボルト、ナットの緩みがないかトルクチェックを行い、配線被覆の摩耗、腐食がないかを確認してください。Mercury指定の純正グリスを可動部に塗布してください。

9.2 ステアリングロック(輸送用固定具)の適切な使用とキーON時の禁止事項

ボートをトレーラーに乗せて陸上輸送する際、または長期間係留保管する際、路面の振動や波による外力から電動ステアリングアクチュエータの内部ギヤやモーターを保護するために、「ステアリング・トランスポート・ロック(固定ブロック)」をアクチュエータシャフトに装着する必要があります。

📌 通知 (NOTICE) — 物理的破損に関する厳格な禁止事項
ステアリングロック(固定具)を装着した状態のまま、イグニッションキーを「ON」または「RUN」位置に回す操作は、いかなる理由があっても絶対に禁止します。キーをONにすると、電動ステアリングアクチュエータに強力な電流が流れ、自動的に初期位置を確認しようとモーターがフルパワーで駆動します。この時、物理的なロックが装着されていると、モーターの強大なトルクが逃げ場を失い、アクチュエータの内部ギヤの歯こぼれ、シャフトの湾曲、取り付けブラケットの亀裂、あるいはステアリング制御モジュール(SCM)の過電流による回路焼損など、即座に走行不能となる深刻な物理的損傷をシステムに与えます。必ず「キーを回す前に、ロックを取り外す」ことを徹底してください。

9.3 バッテリー電圧低下時に発生するアイドリング自動上昇の仕様

本完全電動ステアリングシステムおよびDTSシステムは、大量の電気エネルギーを消費します。オルタネーターからの充電量が不足しているか、またはバッテリー自体の劣化・放電によってシステム電圧が一定のしきい値以下に低下した場合、システムは電圧を維持し、ステアリングの制御喪失という最悪の事態を防ぐために、以下の安全保護仕様(自動アイドリングアップ機能)を搭載しています。

  • 動作の挙動: 電圧低下を検知すると、オペレーターが電子リモコンレバー(ERC)やジョイスティックを一切動かしておらず、ギヤがニュートラルであっても、システムがオルタネーターの発電量を強制的に増やすため、エンジンのアイドリング回転数を自動的に「25 RPM刻み」で段階的に上昇させます。電圧が安全圏に復帰するまで、回転数は上昇し続けます。
⚠️ 操船上の危険性と注意
この機能はシステムを守るための正常な仕様ですが、離着岸時やマリーナ内での係留作業中など、非常に狭いスペースで予期せずエンジンの回転数が上がると、オペレーターが意図しない急な推力が発生し、岸壁や他船への激しい衝突事故を招く危険性があります。出航前にバッテリーの状態を100%にしておくことはもちろん、港内操船中に断続的な警告音が鳴り、アイドリングが勝手に上がった場合は、この電圧補正機能が作動していることを認識し、慎重に操船してください。

9.4 緊急時の手動ステアリングセンター復帰手順

海上での航行中に、電気系統の致命的な故障や通信途絶(クリティカル fault)が発生し、特定のエンジンが傾いた(ハの字に開いた)ままステアリングが完全に無反応(ロック)になった場合の緊急処置手順です。

  1. 安全の確保とエンジン停止: 周囲の安全を確認し、アンカーを打つか、または安全な場所に漂流させて、故障しているエンジンのイグニッションキーを完全に「OFF」にし、メインのバッテリースイッチ(赤スイッチ)を切断してください。通電したまま作業を行うと、突然アクチュエータが作動して手を挟まれるなどの大怪我を負う危険があります。
  2. カウリングの取り外し: エンジンのトップカウリングを取り外し、アドバンスド・ミッドセクション(AMS)にある電動ステアリングアクチュエータの本体を確認します。
  3. 緊急解放バルブ/機構の操作: アクチュエータのモータエンドまたは指定のリリースボルトを緩めることで、内部のギヤロックが一時的に解除され、機械的な結合がフリーになります。
  4. 手動による押し戻し: エンジン本体を、人の力で物理的に強く押し、隣のエンジンと完全に平行、かつ真っ直ぐ前を向く位置(センター)まで動かします。
  5. 再固定と低速帰港: エンジンがセンターに戻ったら、リリースボルトを確実に締め直して再固定します。ステアリングの電子制御は死んでいるため、この状態での通常航行はできません。マルチエンジン船であれば、故障したエンジンをチルトアップして固定し、生きている残りのエンジンだけを使用して、手動で細心の注意を払いながら、最寄りの港までデッドスロー(微速)で緊急帰港してください。1基掛けの船の場合は、直ちに救助を要請してください。

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